【コロンビア・レティシア8日目】この町にいたらきっと、頭がおかしくなる。
2017年4月6日、きのうのはなし。
ここ数日は夜、日が変わるまでには寝ていたのに、なぜかこの日はなかなか眠れなかった。
パソコンを開いて、他の旅人たちからもらった動画データの中から、あいのりを選ぶ。
懐かしい。中学生の頃にハマってた。
(当時、ただっちが好きだった。)
番組内で出てきた、「親指の恋愛」というワード。
携帯メールのやり取りだけで手軽にできるようになった恋愛のことだ。
ただ、あいのりでは、ラブワゴンに乗る前に携帯を没収されてしまう。
これまでメールで数々の女の子を落としてきたリョウは、直接話して口説くというのが上手くできず、苦戦していた。
自分はどうだったっけ?
思い返せばわたしも、今までの彼氏とは、付き合う前には必ずメールやLINEをしたし、それがなかったら付き合うことになってなかったかも、という恋もあった。
今までわたしがしてきた恋愛は、「親指の恋愛」に近いものだったのかもしれない。
今、アマゾンのジャングルからほど近い田舎町にいるわたしは、「親指の恋愛」を取り上げられてしまっている。
この町に住むエディソンがわたしからのメッセージを見るのは、1日に1,2回、スマホをネットに繋いだときだけ。
まともなやり取りなんてできないし、会う約束もうまくできない。
そもそもエディソンは、わたしに会う気などないのだとも思う。
「オンライン中」なのに返事が来ないのは、そういうことなんだろう。
彼に会ってからというもの、わたしは暇さえあれば彼のことを考えていた。
(そしてわたしは大抵暇だった。)
初めはゲイだと思ってたし、その後もカッコいいけど好きになることはない、と思っていた。
言葉もあまり通じないし、連絡も取れないし、約束は破るし。
真剣に好きになることなんてできない。
今はどうかな。
一緒にいたときは楽しかったと思うし、返事がなくて寂しいし、もっと色んなこと知りたいと思うし、彼に会いたい以外の感情が、ここ最近で湧いた記憶がない。(痛いやつですみません。)
町を歩いてても、彼の姿を探してしまう。
小さい町だから、またすぐ会えると思ってたのにな。
いつの間にか、エディソンの存在は、前より大きくなっていた。
冷静に考えたら、頭の中で彼のことを美化してしまっているだけなのかもしれない。
一緒に夕陽を見たあの夜、彼が自分の唇をチョンチョンと指差し、"kiss me"と言ったときの映像は、少なくとも1384269072回は脳内再生されている。
この町にいたら、頭がおかしくなりそう。
ついにわたしは、レティシアを出る決断をした。
大好きになったこの町を、こんな気持ちで去るのは少し悲しいけど、今はここにいても辛いだけだ。
今日もひとりで夕陽を見に、港まで行った。
帰り道、優しい極悪ブラジル人の彼に会った。
(彼とはなぜかよく会う。)
手を怪我していた。
昨夜、彼を巡って喧嘩しだした女たちを止めたら、切れてしまったらしい。
相変わらず、映画の世界を生きる男だな…
そしてもうここで彼女ができたのか。
モテてモテて仕方がないらしいが、ちゃんと断ってると言っていたので、ただのチャラ男ではないみたいだ。
そんな彼とくだらない話をしていたら、少し楽になった。
どこかの業界ではすごい立場にある彼も、わたしにとってはごく普通の友達だ。
(彼の手をガラスで切ってしまった女の人は、そのことが彼の仲間に知れたらきっと殺されてしまうらしい…!)
ボゴタ行きが決まったら連絡して、と彼は言った。
信用できるドライバーと共に、空港まで送ってくれるそうだ。
最後まで優しい人だな。
夜ごはんは、最近よく通っているローカルなお店で食べた。Hotel Divino Ninoを出てすぐの交差点を右に曲がったところ。
お店の前で焼いてるチョリソー(4000ペソ)が好きで通っていたけれど、具沢山スープとご飯が6000ペソ(約230円)で食べられることが判明したのだ。
ライスの横のおかずは毎日変わるみたいだが、今日はまさかの、ぺっちゃんこにされたバナナだった。
わたしは南米でよくある、バナナを芋みたいに調理してしまう文化が苦手だ。
でもこれは唯一美味しかった。
甘すぎず、酸っぱくもなくて、本当に芋みたいだった。
ライスもただの白ご飯ではなくて、ガーリックライス的な味がついてて美味しい。
スープはお肉や野菜が沢山入ってて、やはり美味しいし、お腹いっぱいになる。
オススメのレストランだ。
色々と思い疲れたわたしは、9時頃には部屋の電気を消した。
明日の朝、ボゴタ行きのフライトを取ることにした。